コーヒーの4:6メソッド:粕谷哲の世界一レシピを自宅で再現する
湯を「4」と「6」に分けるだけ。味と濃さを別々に操る抽出法
執筆 · Coffee Info 編集部
2016年のWorld Brewers Cupでアジア人として初優勝した粕谷哲さんが考案した「4:6メソッド」。注ぐ湯を最初の40%と残りの60%に分け、前半で「味(酸味と甘みのバランス)」を、後半で「濃さ」を別々にコントロールします。変数が切り分けられているから初心者でも再現しやすく、なのに自在に味を調整できる——その理屈と手順を、数字つきで丁寧に解説します。
目次 · 9 章
ハンドドリップは奥が深い反面、「何をどう変えれば味が変わるのか」が分かりにくい抽出法でもあります。そのモヤモヤを一気に晴らしたのが、粕谷哲(かすや・てつ)さんの「4:6メソッド」。2016年のWorld Brewers Cupでアジア人初の世界チャンピオンに輝いたレシピで、湯をたった2つのまとまりに分けるだけで、味と濃さを別々に、しかも狙って動かせるのが画期的でした。
4:6メソッドの核心:注ぐ湯全体を「最初の40%」と「残りの60%」に分ける。最初の40%が酸味と甘みのバランス(=味の方向)を、残りの60%が濃さ(=薄い/濃い)を決める。2つのダイヤルが独立しているから、味を崩さず濃さだけ変える、といった調整ができます。

4:6メソッドとは——「味」と「濃さ」を分けて操る
従来のレシピは「お湯を◯回に分けて注ぐ」と手順を丸暗記するものが多く、なぜそうするのかが見えませんでした。4:6メソッドは、湯全体を機能で2つに割ります。前半40%は粉から最初に出る、酸味と甘みを左右する成分のコントロール。後半60%は全体の濃度(濃さ)のコントロール。役割をはっきり分けたことで、調整が論理的にできるようになりました。
- 最初の40%(味のダイヤル):注ぎを「少なめ→多め」にすると甘く、「多め→少なめ」にすると明るい酸が立つ
- 残りの60%(濃さのダイヤル):分けて注ぐ回数が多いほど濃く、少ないほど軽く仕上がる
- 2つは独立:味の方向を保ったまま濃さだけ、あるいはその逆も狙える
このメソッドが初心者に強いのは、変数が切り分けられているから。普通は挽き目・湯温・注ぎ方が同時に効いて何が原因か分かりませんが、4:6では「前半=味」「後半=濃さ」と原因と結果が1対1。1回ごとに1つだけ変えれば、自分好みへ最短で近づけます。
必要な道具と基本の数値
特別な器具は不要。ハリオV60など円錐ドリッパーがあれば始められます。粕谷さんの基本セッティングは次の通りです。
- ドリッパー:ハリオV60(円錐・大きな1つ穴)が基本。流量を自分でコントロールしやすい
- スケール:0.1g単位+タイマー付きが理想。「いつ・何g注いだか」を見える化する
- 挽き目:粗挽き(ザラメ〜グラニュー糖の中間くらい)
- 湯温:92℃前後(浅煎りはやや高め、深煎りはやや低めでも可)
- 比率:豆20g:湯300g(1:15)が基本
基本比率 1:15(豆20g:湯300g)
豆 20g / 湯 300g
ステップ1:豆を挽き、湯を用意する
豆20gを粗挽きにし、ドリッパーにペーパーをセットして粉を平らにならします。湯は300gを92℃前後に。スケールにのせて0gに合わせ、タイマーを準備します。粗挽き+1:15は「湯がスッと抜けて雑味が出にくい」黄金設定です。
ステップ2:最初の40%(120g)で味を決める
全体300gの40%=120gを、2回に分けて注ぎます。1投目で蒸らし、約45秒後に2投目。バランス重視なら60g→60g。もっと甘く重心を低くしたいなら少なめ→多め(例:50g→70g)、明るくジューシーにしたいなら多め→少なめ(例:70g→50g)。この前半の配分が、その一杯の「味の性格」を決めます。
ステップ3:残りの60%(180g)で濃さを決める
残り180gを、湯面が落ちきる前に追加していきます。標準的な濃さなら60gずつ3回(合計5投)。もっと濃く・しっかりさせたいなら45gずつ4回に細かく分け、軽くすっきりさせたいなら90gずつ2回に減らします。注ぎを分けるほど粉と湯の接触が増え、濃く抽出されるのがポイントです。
ステップ4:落としきって完成
最後の湯を注ぎ終えたら、あとは自然に落としきるだけ。全体の抽出時間は3分30秒前後が目安です。大きく早い・遅いときは挽き目で調整(早すぎ=細かく、遅すぎ=粗く)。落ちきったらドリッパーを外し、サーバーを軽く回してから注ぎます。
基本レシピ(バランス・標準の濃さ)の早見:豆20g/湯300g/粗挽き/92℃。0:00→60g(蒸らし)、0:45→120g、1:30→180g、2:15→240g、2:45→300g、3:30前後に落としきり。まずはこの通りに1杯淹れて、基準の味を体に覚えさせましょう。
味を調整する——2つのダイヤル早見表
基準の一杯を飲んで「もう少しこうしたい」と思ったら、いじるのは1回につき1つだけ。前半(味)と後半(濃さ)を分けて考えます。
- 甘く・まろやかに → 前半を「少なめ→多め」(例:50g→70g)
- 明るく・ジューシーに → 前半を「多め→少なめ」(例:70g→50g)
- 濃く・しっかり → 後半を細かく分ける(45g×4回など)
- 軽く・すっきり → 後半をまとめて注ぐ(90g×2回など)
- それでも合わなければ → 挽き目を一段だけ動かす(細かく=濃く長く、粗く=軽く短く)
つまずきポイント
- 一度に何個も変える:原因が分からなくなる。前半か後半か、必ず1要素ずつ
- 細挽きで詰まる:4:6は粗挽き前提。細かいと湯が抜けず苦く重くなる
- 注ぐ勢いが強すぎる:粉が掘れて偏る。中心から「の」の字でやさしく
- スケールなしで目分量:再現性が出ず調整が意味をなさない。グラムと秒は必須
よくある質問
粗挽き・1:15以外でもいい?
もちろん可能です。基本を体で覚えたら、比率を1:16にして軽くしたり、挽き目を中粗にして濃度を上げたりと、自分の好みに寄せていけます。ただし最初は基本セッティングで「基準の味」を作り、そこから1要素ずつ動かすのが上達の近道です。
お湯の温度は何℃がいい?
92℃前後が扱いやすい標準です。浅煎りで酸や香りを伸ばしたいときは少し高め(93〜96℃)、深煎りで苦味を抑えたいときは少し低め(85〜90℃)が目安。湯温による味の動きは湯温の記事で詳しく解説しています。
ハリオV60じゃないとダメ?
必須ではありませんが、粕谷さんが想定するのは流量の出やすい円錐1つ穴のV60です。台形のカリタ(3つ穴)でも応用はできますが、湯の抜け方が変わるため、まずはV60で基本を覚えるのがおすすめ。ドリッパーごとの違いはペーパーフィルターの記事も参考に。
4:6メソッドの本当の価値は、特定のレシピを暗記することではなく「味と濃さは別々に動かせる」という考え方そのものにあります。一度この地図を手に入れれば、どんな豆が来ても、はじめの一杯から狙って近づけられるようになります。まずは基本通りに1杯。そこからは、あなたの好みに合わせて2つのダイヤルを回すだけです。
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