学習パス · 初級/第 2 章
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コーヒーを語る人たちが使う「ベリーのような」「ナッツの余韻」という言葉。これは才能ではなく、誰でも訓練で身につく言語化スキルです。
目次 · 10 章
コーヒーは 800 種以上の香気成分を持ちますが、人間の脳はそれを「言葉」にしないと記憶できません。逆に言えば、言語化さえできれば誰でもプロのテイスティングノートが書けるようになります。味覚そのものより、語彙と習慣の問題なのです。

ステップ 1: まず温度を変えて飲む
一杯のコーヒーを 3 つの温度 (熱い・温かい・冷めた) で味わってみてください。温度が下がると酸味と甘みが浮かび上がり、別の風味が現れます。これだけで「自分の好む温度帯」がわかります。
ステップ 2: 4 つの要素を順に評価
- 香り (アロマ): 鼻を近づけて何の香り?
- 酸味: 強いか弱いか、何系の酸味か (柑橘・ベリー・リンゴ・ワイン)
- ボディ: 軽いか重いか、紅茶っぽいかミルクっぽいか
- 余韻: 飲んだ後何が残るか、長さは
ステップ 3: 連想する食べ物を当てはめる
「ベリーっぽい」と感じたら、ブルーベリー?ラズベリー?ストロベリー? もう一歩進んで「ブルーベリージャム」「冷凍ブルーベリー」など状態まで連想すると、再現性のあるノートになります。
フレーバーホイールを参照すると言語化の助けになります。中央の大カテゴリから外側の具体例へ辿っていく方式が SCA 推奨です。
語彙に詰まったら:カテゴリ別スターター
「言葉が出てこない」ときは、ゼロから探さず、下のカテゴリから近いものを選ぶだけでOK。まず大分類(果実・花など)を当て、次に具体名へ降りていくのがコツです。
- 果実系: レモン・オレンジ(柑橘)/ブルーベリー・いちご(ベリー)/りんご・桃(核果)
- 花・甘い香り: ジャスミン・紅茶・バラ/はちみつ・メープル・黒糖
- ナッツ・カカオ系: アーモンド・ヘーゼルナッツ/ミルクチョコ・ビターチョコ
- スパイス・その他: シナモン・クローブ/キャラメル/土・きのこ(アーシー)
- 質感の言葉: シルキー・クリーミー・さらっと・ジューシー・ドライ
記入例:テイスティングノートの書き方
完璧な文章は要りません。下のように4要素を一言ずつメモするだけで立派なノートになります。「正解」を当てる必要はなく、自分が連想したものをそのまま書くのがコツ。例として、浅煎りのエチオピアを飲んだ想定で書いてみます。最初は単語の羅列で十分です。同じフォーマットで何杯も書きためると、過去のメモが「自分専用の辞書」になり、新しい一杯を表現する語彙がどんどん増えていきます。
- 銘柄/焙煎: エチオピア イルガチェフェ/浅煎り(焙煎8日目)
- 香り: ジャスミン、レモン、紅茶のような華やかさ
- 酸味: 明るく軽やか。レモンティーに近く、刺さらない
- ボディ/余韻: 軽め。後味はすっと消え、最後に蜂蜜のような甘さ
- 総評: 朝に飲みたい一杯。冷めるとオレンジの甘みが出て、さらに好み
ステップ 4: 3 ヶ月続けて記録する
テイスティングは「自分との会話」です。最初の 1 ヶ月は「全部美味しい」しか書けなくても、3 ヶ月続けると突然語彙が増えます。記録なしに記憶だけで判断するのは不可能。アプリで記録を残しましょう。
ステップ 5: 同じ豆を違う方法で淹れる
同じ豆をハンドドリップとフレンチプレスで淹れると、別物のように味が変わります。これが「抽出が風味を作る」ことの体感です。自分の好む抽出スタイルが見えてきます。
プロの「カッピング」を真似てみる
カッピングは、世界中のバイヤーやロースターが共通の手順で味を評価する方法。家庭でも簡単に真似できます。粗挽きの粉をカップに直接入れ、92〜93℃の湯を注いで4分待つ。表面の層(クラスト)をスプーンで割って香りを嗅ぎ、アクを取り、少し冷めたらスプーンで「ズズッ」と勢いよくすすります。
すする(スラープ)と、コーヒーが霧状になって口内と鼻腔の奥に広がり、香りと味を同時に最大限とらえられます。行儀は気にせず、思い切りすするのがコツ。
ポイントは「同じ条件で複数を横並びにする」こと。1種類だけだと基準がなく言葉になりませんが、2〜3種を並べると「こっちの方が酸が明るい」「こっちは重い」と差分で語れるようになります。違いは比較から生まれます。
よくあるつまずき
- 「正解」を当てようとする → ノートは主観でOK。自分が連想したものが正解
- 熱いうちだけで判断する → 冷める過程でこそ個性が出る。最後まで飲む
- 語彙が出ない → フレーバーホイールの大カテゴリ(果実・花・ナッツ等)から選ぶだけで十分
よくある質問
味覚に自信がなくても言語化できる?
できます。これは味覚の鋭さではなく「語彙」と「記録の習慣」の問題。フレーバーホイールの大カテゴリから当てはめ、3ヶ月記録を続けるだけで、誰でも言葉は増えていきます。
一度に何種類を比べるのがいい?
2〜3種が最適です。多すぎると舌が疲れて違いがぼやけます。系統の違う豆(明るい酸/重いコク)を並べると、差が言葉にしやすくなります。
どんな豆で練習するのがいい?
個性のはっきりした浅〜中煎りのシングルオリジンが練習向きです。深煎りのブレンドは要素が溶け合って分解しにくい。まずはエチオピアやケニアなど「分かりやすく派手な」一杯から始めると、語彙が増えやすくなります。
コーヒー以外の飲み物で練習してもいい?
むしろ有効です。ワイン・紅茶・チョコレート・果物など、香りの層が豊かな飲食物で「香りを言葉にする」練習をすると、そのままコーヒーにも応用できます。日常的に「これは何の香り?」と問いかける癖自体が、テイスティングの土台になります。特に紅茶は、フローラルやフルーティといったコーヒーと共通する語彙が多く、入口として最適です。
3ヶ月も続ければ、「これはストロベリージャムっぽい」「アールグレイの後味」と自然に言葉が出てくるようになります。テイスティングは才能ではなく、記録と比較の積み重ねです。
学習パス · 初級 第 2 章 — つづき
第 3 章 · 朝の 5 分で淹れる、毎日が美味しいルーティンこの記事は役に立ちましたか?
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